

ちょっと元気になる ための一つの方法



第6回の演劇祭、上野ストアハウスで印象的な舞台を見せてくれた泥棒対策ライトが帰ってくる。ラストシーンで、劇場のドアを開けて本当に外に出て行ってしまったあの舞台。
―― 今回のモチーフはメトロノームですね。
下司:終わらないものってないんだなあ、って思ったときがあって。ずっと終わらないで普通にあるだろうと思っていたものも終わるんだろうと。あ、哲学的な感じに聞こえるんですけど、「笑っていいとも」が終わったりとかね(笑)。夕暮れも、だんだん今日が終わって明日になっていくっていうか、ああ、もう戻ってこないんだなあ、って思って。メトロノームの針って、規則的に揺れてるように見えるんだけど、振れ幅があって、時間って、縦軸だけじゃなくて横軸もあるんだなあ、とかって。
ドロタイの舞台は、構成・演出・振付、出演もする下司尚実の、この『心象風景』がグーッと舞台上に具現化する仕掛けになっている。
―― 俳優が感じるその魅力とは。
近藤:ちょっと前にですね、私、がっつり失恋をしたことがあって。で、そのことをちゃんとしもちゃん(下司)と話したことはなかったんですけど、稽古で振付されて、踊ってというやり取りで「あ、今、会話したな」って感じたことがあって。
―― 振付を通しての会話。
近藤:まず人がいて、その人たちがもっているものを引き出したりする作業で作品を創ってくれるから、俳優の存在意義がある気がする。普通の会話は照れくさくてあんまりしないけど(笑)。
萩原:話を聞いたり身体を動かしていると、すっと入っていける瞬間があって、入っていくと見たことのない景色が見られるのが面白いかな。
下司:稽古が終わっての帰り道に「あー、今日楽しかったあ」って言った子がいて(笑)。一瞬、何しに来たんだ、と思うけど、まぁいいかって。
―― もちろん、その実力は下司の活躍の広さが保証する。縦軸と横軸は創造に奥行きを創る筈だ。