

勝率5割からの挑戦



1985年、日航機が御巣鷹山に墜落、NTT発足、スーパーマリオブラザース日本発売、夕焼けニャンニャン放送、松田聖子結婚…。
この年、唐十郎作「ジャガーの眼」初演。そして「今回は、その時代の熱気をそのまま持って来ようと思ってます」というTWT主宰でプロデューサーの、木村孔三が生まれたのも1985年。
昨年上野ストアハウスで公演をしたときに、雑談の中から、ごく近所に唐十郎の自宅があったということを知る。そこで同じ台東区の演劇祭応募の際に、軽い(!)気持ちで「唐十郎作品を」と書いたら当選してしまった。
「うっ、って思って。で、覚悟して、四大海さんに、あの、唐十郎をやることになりそうなんだけど、どうですかね?って聞いたら「『ジャガーの眼』がいいんじゃないかな」って、言ってくれたんで。じゃあ、やってみようかな?って(笑)」
TWTの演出を手掛けるのは、劇団S.W.A.T!の座長でもある四大海。
卒論で唐十郎をテーマに書いたというほど「好きだったんですよ。唐さんを知って、状況劇場を知って、花園神社(の公演)とか行ったりして。帰るときにね、音楽が耳に残ってて、それを口ずさみながら靖国通りをスキップして帰った(笑)」
だが、難解だというイメージが強い唐作品なので、正直キャスティングにも苦労した。「台本渡して不安になっちゃう人もいるし(笑)。会って、二、三時間、熱意を伝え続け、それで勝率5割くらいですね」
TWTの面白さは、おそらく、木村のこういう誠実さの中にある。
大学を出て、演劇の仕事をしながらも「自分がやりたいものに時間を費やすには自分でやるしかない」とセルフプロデュースの道に。
そんな木村の熱意に?「いえ、僕は、唐さんという名前だけで口説かれましたけど」と出演者の阿部遼哉。
「台本読んでも全然わからなかったです(笑)。でも、僕、逆に良かったと思ったんですよ。全然わからない人がいないまま、舞台作ることにならないでしょ。僕が教えてもらいながら稽古でやって、それをお客さんに、伝えられたらいいかなと」
それでも不安な皆さまには「言っちゃえば愛の物語だよね、ものすごくわかりやすく言っちゃえば」という演出家の力強いメッセージをお届けしたい。
ちなみに世界的なヒット曲「We Are The World」の発売も1985年。
あ、関係ないですかね。