-普段は、それぞれで別の団体で活動をしていらっしゃるんですよね。
小林:はい、一緒にやるのは初めてです。
サマソニタカハシくんと初めて公演したのが去年、僕は客演だったんですけど。その前にやったことはなかったんだよね。
タカハシ:僕がオファーを出して、小林君に出て貰ったんです。
小林:作・演出が彼で、大変だったんですけど、それなりに楽しくて、今年の年初めくらいに、公演したいね、またやるの?みたいな。
タカハシ:そうだよね。
小林:もともとタカハシ君と知り合ったときには僕も劇団の主宰もしていたんですよ、学生の同期とかと。
タカハシ:池袋のシアターグリーン学生芸術祭という同じ演劇祭に出てたんですよ。その時に知り合って。
-別々の大学で?
小林:そうですそうです。
タカハシ:グループも別で。だから一緒に公演をやったっていうよりは、そのお祭りの中で一緒だったんだよね。
小林:そうですね。
タカハシ:合同飲み会みたいな、決起集会みたいなのがあったんですよ。
小林:学生だから、盛り上げないといけないんですよ(笑)。
コールってよくないって言われてますけど、タカハシ君たちは、コールとかするような学生だったんですよ。で、実は、僕らもそういう学生で。でも僕ら初めて外の演劇祭だったんで、どういうノリでいくかわからないから静かにしてたんですよね。そしたらタカハシ君がなんの躊躇もなくめちゃくちゃ飲ませててコールで、他の学生は、ちょっと引いてて。
タカハシ:引いてたね、あいつら、引いてたね(笑)。
小林:「コールとかしてるよ」みたいな。
タカハシ:演劇とかやっている人ってそういうところ真面目なんだよね。
小林:真面目っていうかそういうノリはちょっととか。で、僕らも知らないふりしてたんだけど、自分たちはやってるくせに。それで割と仲良くなって。その後、僕は自分で(劇団)クロムモリブデンに演出部で入って。4,5年たってタカハシ君に誘われて、急に。「出てくれない?」みたいな。
-運命の出会い(笑)からしばらくは別々にやってらして、でなんかやるときに「あ、あいつだ」って思ったんですね。
タカハシ:そうですそうです。
小林:観には来てくれていたんですけどね。僕も始めてオファーされたので、「どうしようかな、出ます」って。それで出たんです。
タカハシ: 5年の間に、コバ君の芝居はクロムで見させてもらっていて、コバ君が出てるとひいき目で見ちゃうんですよ。あ、コバ君出てきたって(笑)。そりゃしょうがないんですよ、コバ君、頑張ってるな、みたいな。
でも、クロムでのコバ君の扱い方がちょっと僕的には納得がいかなくて、セリフがなかったりとかしてて、ちょっとあれはどうなの?って。もっとしゃべってもいいのに、とか。
小林:(笑)
タカハシ:昔のコバ君は喋ってたんですよ、僕が個人的に観に行ってたメンチカツ也とかでは、結構リーダー的にひっぱっていく役だったけど、クロムでは。
小林:若手だし。実力的にも劇団だとね。
タカハシ:で、僕のに出て貰ったらとにかくいっぱい喋ってもらおうと思って。結構台詞はあったよね。
-お二方とも脚本を書かれる方なんですよね?
小林:そうですね。
-どれが一番お好きですか?演出と作家と役者だとしたら。
小林:僕が本当にずっと思っていたのは、面白い作品に関わりたいというだけですよね。
あんまりこういう芝居したいとか、こういう役者になりたいとかなくて、どれが好きとかいうことじゃなくて、でも演出を一番頑張りたいな、といつも思うんですけどね。
でも自分には演出家としての能力はあんまりないので、演出助手で頑張って、自分を支えていきたいな、と。なんかうまく言えないんですけど。
-演出助手として頑張るんですか?
小林:そうそう。演出の小林のダメなところをちゃんと支える演出助手の小林をどんどん出していかないと。今、作家の小林にもちゃんと怒んないといけないんですけど(笑)。
-たくさんの小林さんがいらっしゃるんですね(笑)。
小林:そんな感じですね。書くのは好きですね。好きっていうか、アイディアを、こんなことしたいなっていうのを考えるのは好きです。
-作家の小林さんですね。
小林:この間、サマソニに出たときも、タカハシ君見てたら自分が主宰やってるときのダメなところがすごい出てて、で、演出助手的なこともやったんですよ、
-演出助手の部分が頑張ったわけですね(笑)。
小林:そうです。
タカハシ:最終的に公演が終わって皆が「コバ君は演出助手としての才能がすごくある」って。皆の一致した意見ですよね、そのくらいその、確実に自分の力を発揮してくれたってことですね、その分野に関しては。
小林:役者としてどうだったかはちょっと置いておいて(笑)。自分もなんかそういうのはね、向いているなとは思うんですけど。
-なるほどね。でも普段は自分で自分を頑張らせてるんだけど、その時は、タカハシさんを頑張らせてたわけですよね。
タカハシ:本当に、コバ君がいなかったら、っていうくらいの気持ちでした、最終的には。もうコバ君が全部気づいてくれるんですよ、先に。僕が困ってるな、とか、言わないけど悩んでるな、みたいな。僕、結構稽古の中で、いきあたりばったりなことがあって、「いや、その気持ちもわかるけど、こうやってやっていかなきゃいけない」みたいなことを、先生と生徒のような関係で。
本当にお世話になったというか。
小林:本当にね、お世話したかもしれない。
タカハシ:「のんべぇい!」っていうのはコバ君がいなければ成立しなかった公演ですよ。
-へえ。でもそれってある意味、黄金のコンビかもしれないと思いますけど。
小林:そうですかね(笑)。
-今回は、そんな歴史を経ての舞台ですが?
タカハシ:続編とかではないんですけど。タイトルを選ぶときになんかいいタイトルないかな、と思って…。
小林:ゾンビの話はなんでだっけ?
花やしきでやりたいってなって。で、そのときにゾンビが出てきたんだっけ?
もう足並みそろえるし、だったら、同じ一緒のやつをやって、前半と後半でわけて「フロム・ダスク・ティル・ドーン」 みたいにしようかと。タランティーノが書いて、途中まですごい会話劇でいきなりヴァンパイヤ映画になるみたいなのがあって、そういう感じでいいから、途中から“メンチカツ也が”やってで途中まで“サマソニ”でいいんじゃない?みたいな。合同公演のほうが、一緒に脚本演出するより面白いんじゃないかっていう流れです。
-合同公演のスタイルですね。
小林:一応そういうスタイルなんですけど、結果的にどうなるかわかんないです。途中でいろんな喧嘩はすると思うんですよ、作品に対して。そうなったときにどっちがイニシアティブをとるかわかんないんですけど、まあそこは相談して、で、まあいいバランスで。
-花やしきでやるということで何かお考えですか?
タカハシ:花やしきでやるということが非常に大きな意味があると、僕は思うんですね、お客さんは作品を見に来る以前に、花やしきに行くっていうことも、他の劇場にいくのとぜんぜん違うと思うんですよ。
だからやるんだったら、花やしきの特徴を生かさなくてはいけないし、例えば花やしきでやるのに、最初から最後まで、箱馬一つで会話劇なんて絶対に俺はそれはないと思うんですよ(笑)。
やっぱりアトラクションがあるところだったら、アトラクションみたいな演劇をやるのがお客さんも結果的に喜んでくれるだろうし、それはあると思うんですよね。だから紹介するんだったら、やっぱり花やしきでしかできない、花やしきの特性を最大限生かした、そこから生まれたストーリーっていうのがいいかなと思ってますね。
-タカハシさんは、このあたりのお生まれなんですよね?
タカハシ:僕は入谷。台東区の入谷なんですね。そこの幼稚園に行ってたんですけど。
-子どもの頃、花やしきとかでは遊んでますか?
タカハシ:もちろんもちろん。
-どんな印象があります?
タカハシ:僕が行ってた頃は、まず、ちょっと汚いっていうイメージがあって。
小林:汚いって(笑)。
タカハシ:いや、ホントに。汚いぼろい、だけど小っちゃいながら凝縮されているんですよね、なんか。あと、浅草っていう下町の中にあるっていうイメージが大きかったんで、遊園地に行ったら帰りにあそこで御飯を食べてとか、そういう一日の流れができるっていうのがありましたよね。
-おうちの方に連れられて行かれました?
タカハシ:もちろん。よくおじいちゃんとかと行きましたし、パンダカーとかもよく乗りましたよ。
-パンダカーね、人気ですよね。
タカハシ:でもある時ディズニーランドに連れて行ってもらって、「あ、こんなすごいところがあるんだ」って、やっぱり思ったんですよ、子ども心に(笑)。そこらへんからなんか花やしきに行かなくなっちゃったんですよね。外国産業のが楽しいんじゃないかみたいな気持ちが芽生えちゃって。で、気づいたときには花やしきも倒産寸前に結構一回傾きかけてたのね。
小林:へえ。
タカハシ:でも、中高生くらいになってまた行ったときに、「ああ、俺はこっちのほうが居心地がいいな」って思ったんですよね。何だろう?空気感っていうか、僕はやっぱりこっちのほうが地元だったしが楽しいな、っていうのは思いましたね。
-一回行っちゃったけどね、外国産業にね(笑)。
タカハシ:一回道を外しましたけどね(笑)。
でも気持ちはここなんだなって思いましたね。
だからホントに花やしきでやれるっていうのは、僕の人生の中でもすごい意味がある。
-小林さんは、どちらのご出身ですか?
小林:僕は岐阜出身なんですよ。岐阜のド田舎で、花やしきなんか行ったことないですよ。
-浅草とかは?
小林:ぜんぜんないです。僕の浅草の思い出は、受験のときに上野に泊まったていうことしか。それはすごい覚えてるんですけど。
-受験のときですか。
小林:はい。で、外を歩いて、雷門で「受かりますように」っていって、落ちたんですけど、その大学(笑)。一泊してから試験会場に行ったんだ。で、試験に行って、フライデー買って、フライデーを家に持って帰るのが怖くて、そこに捨てて帰って行ったっていうのを覚えてる(笑)。
タカハシ:(笑)。
小林:「これが雷門なんだ」って。東京すげえなって思ってました。
-それじゃこの間の見学会のときに初めてご覧になったんですね。
見学会のときに初めてで。僕は普通の劇場でやろうよ、みたいな気持ちがあったんですよ。で、実際に見学に行ったらこんなところでやるの、めっちゃ面白そうだなって思って、じゃあこっちにしたほうがいいなって思ったんですよね。
劇場じゃないところでやるのもいいかな、ってすごく面白く思えて、不思議と。
あんまり僕はそういうの思わないほうなんですけど。保守派なんで。
-そうですよね、きっちりね、演出助手タイプだからね、きっちりと。
タカハシ:僕の首輪を引っ張っていく立場ですから。
小林:で、ここでやれたら本当にいいかもしれない。浅草って町を歩いていたらいろんな人がいるし、劇場じゃなくてまず町、その町に人が集まって、その結果劇場に足を運ぶかもしれないって。
-じゃあセットで宣伝していただいて。
タカハシ:もちろん。僕らを見に来るより浅草に遊びに行くついでに、花やしきに来るついでに観に来るってなったらいいと思うんです。
小林:観光演劇かとか(笑)。
観光演劇するときは、言ってください。地元の応援があるかもしれないので。
タカハシ:ありがとうございます。
-なんか、個性が出ますね。すぐ「面白そうですね」って乗ってきて大風呂敷広げるタイプと「メモします」ってメモを取るタイプ?あ、ごめんなさい(笑)。
小林:大風呂敷は信用しないようにしているんで。そこは好きに言わせておけばいいやって。
-そういうコンビなんだなって、縮図をみた気がします。
タカハシ:ああ、本当ですか。見えちゃいました?(笑)
-体験型ということなので楽しみにしています。
タカハシ:ぜひ。お化け屋敷とかアトラクションに来てくれるつもりで来ていただければ、その期待を外すようなものは作らないので。間違いないですね。
小林:ゾンビがリハビリするという話なんで。
-(笑)あの、すいません。ゾンビにとってリハビリってなんですか?
タカハシ:人間に戻ることですよ。
-ああ、人間に戻るためのリハビリ…(笑)。
タカハシ:そこでは、身体にいいものというか、肉を食べないようにするんで医学の勉強をするんですよ。肉ばっかり食べるから血がドロドロしちゃって動脈硬化を引き起こすからって。草食系のゾンビが現れるんです。ベジタリアンの。だから肉を食べないベジタリアン。ハンバーガーばっかり食っている人間に比べたらよっぽど健康的な体質を持っているゾンビたちがリハビリセンターに通っているみたいな。あと運動療法もしっかり。
小林:僕は、運動療法とか演劇のレクリエーション。あれをゾンビ姿のゾンビがやって、なんかだんだんうまくなっていっている、例えば絵を描くのだったり、リハビリをしているゾンビが、どんどん喋れるようになったりとか、どんどん歩けるようになったりとか、そういうことによってどんどん人間に戻っていく過程があっていいんじゃないかなと。で、ゾンビは人間になったら何をしたいかなとか。
-なるほど。
小林:ゾンビだってリハビリする、みたいなことをね。ゾンビになったままじゃない筈だと、リハビリして頑張ると人間に戻れると。
タカハシ:ゾンビという点では、初めての視点ですよね。
小林:ゾンビを殺すじゃなくて、ゾンビを生かすという社会の中で。で、ゾンビって元人間だから、人間に戻れる話にしたほうが理にかなっているんじゃないかなと思って。それを人間が助けるのも、好きな人がゾンビだったらどうしようもできないじゃなくて、好きな人が人間に戻るのを手伝おうと思う心理は普通に働くって思ったんですよ。
タカハシ:人間のがよっぽどゾンビみたいなのがいっぱいいるじゃないですか。
小林:そのグレーゾーンがね、面白いんだと思うんです、たぶん。
-これは面白そうですね。
タカハシ:社会派みたいになってますけど(笑)、楽しければそれでいいんです。
-一つのモチーフを二人でやるっていうのには、こういう面白さがあるんですね。きっとね。
タカハシ:どうなるかわからないですけどね。
-出来上がるまでは手のうちは明かさないものですか?
小林:そんなことないです。この後会議です(笑)。
-楽しみですね。ゾンビのリハビリ、楽しみにしています。